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マクロ経済

研究会議
論文
出版
 

中国とインド:欧米日への挑戦

No.3 2008年3月

詳細はPDF(英語)をご覧下さい

内容

サービス分野のアウトソーシング:第三次産業革命はもうすぐそこ?

Arvind Panagariya


近年の電子通信技術の進歩により、豊かな国々が貧しい国々から容易に大量の「熟練サービス」を輸入することが可能になり、こうしたサービス分野での「アウトソーシング」が輸入国経済に対してどのような影響を及ぼすのか、時に激しい議論も聞かれる。 サービス分野での様々な国際取引形態を分類し、特に、業務拠点の移転を伴わない形でのサービスの輸出入がもたらす脅威の種類と大きさ、ならびに政策対応のあり方を分析・検討する。 ただ、現在のところ、米国からインドへの業務委託に伴って発生する雇用の規模は、米国内で毎年発生・消滅する雇用の規模と比べれば極めて小さい。 議論は、サービスのアウトソーシングが通常貿易に与える影響や、米国経済に第三次産業革命をもたらすとの主張に対する分析にも及ぶ。 さらに、インドから米国に供給される「熟練サービス」の将来的な限界についても具体的に指摘する。

欧州におけるアジア政府系ファンドの活動: 大騒ぎするような実態はない?

Paola Subacchi


大規模な経常収支黒字や石油収入で潤う一部のエマージング諸国が、国際資本市場での高い運用収益を求めるようになるにつれ、これら諸国の政府系ファンド(SWF)が改めて脚光を浴びている。 これらファンドの活動に際しては、その組織自体や目的についての情報開示が十分でないことも手伝って、その投資案件が投資対象国で懸念を生むケースも見られる。 ここでは公表データと独自の分析を通じて、これらファンドの規模、目的、計画が明らかにされる。 加えて、アジア系のファンドについて、欧州での彼らの戦略、将来的な投資対象などが考察される。 中国CICの目的は主として証券投資にあること、一般に欧州では投資対象として金融部門が重視されること、さらに、中でも比較的オープンな投資環境が整った英国が好まれること、などが例示される。

インフレ、通貨切り上げ、それとも改革?:中国の対外不均衡および人民元に関する制度・構造面からの考察

Geng Xiao


中国の対外不均衡問題に対して人民元切り上げでの対応を求める米国政府のアプローチは余りに視野が狭い。 中国経済の現状は、完全雇用、完全資本稼動の下での一時的市場不均衡は価格や為替レートの調整を通じて是正されるという、新古典派経済学が描く世界からは程遠い。 中国経済の背景にある、見えない取引コスト、農村出身者を中心とした非熟練の流動的かつ大量の労働者、未整備な社会インフラなどの構造問題が、輸出入の不均衡をもたらしている。 中国経済の長期的な均衡回復は、安定的かつ構造的なインフレと秩序ある通貨切り上げを可能とするゆるやかな金融政策を通じて可能となる。 中国に近代的で堅固な経済インフラの整備を可能にするには、米国を始めとする各国との協力による第二次大戦後の「マーシャルプラン型」の政策枠組みが求められる。 こうした戦略は、中国の国内消費面での基本的制約を緩和することで、中国及びその貿易相手国の双方に利益をもたらすことになろう。

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