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マクロ経済

研究会議
論文
出版
 

インドと中国の比較分析

No.2 2007年3月

詳細はPDF(英語)をご覧下さい

内容

1.パナガリヤ

Arvind Panagariya


インドと中国は、グローバル経済の様相を変えつつあるとみなされることが多い。パナガリヤによれば、どちらの国の通貨も大幅に下落せず、かつインフレ率が米国のそれを上回ると仮定するなら、両国のGDPの合計はドルベースで年率10%の成長を遂げ、2015年には7兆8,000億ドルに達する可能性がある。米国が実質4%の成長を続ければ、そのGDPは2015年に18兆5,000億ドルになるため、インドと中国の高成長は世界の所得構成に劇的な変化をもたらすことになろう。
パナガリヤは、中国とインドの経済成長を促進するに当たって輸出志向の通商政策と海外投資政策が果たす役割を分析している。両国とも市場を段階的に開放しながら急速な経済成長を遂げたが、インドが得た成果は中国よりもやや見劣りする。そこでパナガリヤは両国の改革体制を比較した上で、インド経済が市場開放に中国経済ほど強く反応していないのは、製造業セクターの成長率が低いためだと主張する。さらに、製造業が比較的伸び悩んでいるのは、労働市場に柔軟性がないことや不十分なインフラがボトルネックになっていることなど、国内政策に関連する制約があるためだと論じる。そして今後の通商政策の方向性に言及し、最近のように特恵的貿易協定に関心を寄せていては遠回りになると主張する。インドと中国が国内レベルおよび多国間レベルでの貿易と投資の自由化に注力すれば、自国民と世界経済の両方にもっと大きな恩恵をもたらすことになるそうだ。特にインドは、生産財の自由化で成し遂げた成功を農業セクターにも広げることを検討しなければならないという。

2.ボズワーズ、コリンズ

Barry Bosworth
Susan Collins


インドと中国は1980年以降、目を見張る高い経済成長を遂げてきた。現在も続く両国の高成長は、向こう数十年間の世界経済の動向を決める可能性が高い。ボズワーズとコリンズは両国の成長の要因を、成長会計という手法で検証した。成長会計は、総生産の変化を資本と労働の投入の変化で説明し、それでも説明しきれない部分を全要素生産性(TFP)という効率性の要因で説明するものである。ボズワーズとコリンズは、1978年から2004年までのインドと中国のデータを集め、その後のデータ改訂も考慮してモデルを構築し、さらにこれを第一次産業、第二次産業、第三次産業に分解した。
その結果、インドと中国の成長に関する多くの主題が確認された上に、新しい発見もなされた。例えば、中国の成長率はずば抜けて高いが、インドのそれは発展を続けている東アジアの国々と同程度である。中国の成長は製造業が中心だが、インドではさまざまなサービス業が伸びている。中国では3つの産業がいずれも成長しており、第三次産業の成長率もインドのそれを上回っている。中国では、労働者1人当たりの資本とTFPの伸びの両方が成長に大きく貢献した。またインドを中国と比較すると、インドのサービス業の強さではなく製造業の弱さが目立つという。
ボズワースとコリンズは供給側の要因に基づき、インドも中国も高成長を続けられるはずだと考えている。ただそれには、財とサービスの貿易や投資資金の移動など、グローバル経済との統合が続くことが条件になるとしている。

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