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マクロ経済

研究会議
論文
出版
 

台頭著しいインド経済

No.1 2007年3月

詳細はPDF(英語)をご覧下さい

内容

1.アチャリア

Shankar Acharya


アチャリア論文は、1950年から今日までのインドの経済成長を振り返り、同国経済の中期的な課題と見通しの一部を概観している。経済成長率が 2002-03年度以降に年8%に急上昇したことについては、過去25年間の力強い成長がもたらした勢い、以前より開放的かつ輸出志向を強めた経済、「中流階層」の拡大、若年層の増加、近代化された資本市場での強力な企業の台頭、最近進められている改革、追い風となった国際経済環境などの要因が重なった結果だと論じている。
また中期的なリスクや制約要因として、再び悪化した財政赤字、未整備なインフラ、労働市場のひずみと硬直性、農業セクターの低パフォーマンス、2004年以降の改革の減速、脆弱な人材開発、国際経済環境の悪化などを指摘し、向こう5年間の経済成長率は一部のアナリストやインド政府計画委員会が言うほど高いものにはならず、年6.5〜7%とみる方が妥当かもしれないと記している。ただ、一人当たりGDPの伸び率は同氏自身のさらに控えめな予想でも年5〜 5.5%となり、最近の実績とあまり変わらないという。

2.トムスン

Stephen Thomsen


トムスンによれば、インド経済は今、岐路に立たされている。ここ数年の経済成長率は世界で最も高い部類に入っており、インド政府はこれをさらに押し上げて最近の中国の実績に追いつきたいと考えている。しかし、そのためには現代的でしっかり機能するインフラストラクチャが必要である。過去数年間の過小投資と増え続ける需要を背景に、インドのインフラは悲惨な状況にある。現在の経済成長率を維持するだけでも、かなりのインフラ投資が必要になるだろう。しかしそうした投資だけでは、経済成長の促進や貧困の緩和に役立つ、質と量を伴ったインフラは整わない。今まで試みられてきたものよりも大胆な改革を、これまで以上に入念に実行していく必要があるだろう。
トムスンは、外国資本の導入を視野に入れながらインドのインフラ開発を論じている。まずインドと中国にある公共および民間のインフラを比較し、インドのインフラ開発への民間参加における最近の傾向を分析する。そして電力、通信、輸送の3部門について、それぞれの現状と足元の改革の様子を概観する。中央政府と地方政府の財政状況を考えると、インドのインフラを今後改善できるか否かは民間投資に依存する部分が大きく、その大部分は外国直接投資(FDI)によりもたらされることが望ましいという。最終節では、FDIを呼び込むのに必要とみられる改革の例として、政府のインフラ所有を神聖視するのをやめることを挙げている。

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